心理学と営業と

相手との接触回数と高感度の関係には何やら密接な繋がりがある事は体感していますよね。
仕事の話なんですが
ある研究があります。社会心理学者のザイオンス教授(スタンフォード大)の研究に、人間の好感度に関する有名なものがあります。被験者に、単語や顔写真、幾何学図形などを見せて、それを見たり聞いたりした回数と好感度の関係を調べたものです。

この結果は「人間の、ある対象への好感度は、その対象との接触回数に依存する」というものでした。専門的にはこれを単純接触効果(mere exposure effect)と言い、日本では俗に「ザイオンス効果」とも呼ばれます。

ラジオやテレビなどで何度も繰り返し聞いた曲を好きになってしまった経験は誰にでもあるでしょう。「住めば都」というように、引っ越してきたときは嫌な印象があった地域でも、慣れてしまえば好きになってしまうのも、この理論で説明がつきます。子供が、隣の席に座っている異性のことを好きになったりするのも、同じ理屈で説明できそうです。
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さらにこの効果は、人間がその対象を意識的に認知していなくとも発生するとのことで、マーケティングの文脈では、顧客の無意識への働きかけを考えるときに避けて通れない理論です。

このザイオンス効果を理論的なベースとして、広告業界で経験的に語られているのが「セブンヒッツ理論」です。これは顧客と商品(または商品に関する情報)の接触回数が3回を超えると顧客が商品の存在を認知し、7回で商品を手にとり購買を検討するというものです。


広告や宣伝を打つ回数に関する理論として参照できるのはもちろんですが、それだけではありません。例えば営業マンであれば、客先に滞在する時間ではなくて、客先を訪問する回数にノルマを設けて管理したほうがよさそうです。スーパーや書店が特に売りたい商品は、一箇所にたくさん積んでおくのではなくて、複数の場所に小分けにして積んでおいたほうが顧客の目に触れる回数が増えるのでよいという考え方もあるでしょう。

喫茶店でアルバイトをしている女性に恋をした青年であれば、長時間居座ってたくさんの注文をするよりも、毎回コーヒーしか注文しなくとも頻繁にお店を訪れたほうが女性の記憶に残りやすい・・・かもしれません(笑)。

お気づきだとは思いますが、メルマガやニュースレターがマーケティング・ツールとして広く利用されている理論的な背景は、ここにあります。

余談ですが、これらの理論をベースにすれば、世界的な成功を収めているRPGファイナルファンタジー・シリーズも、VII(セブン)がシリーズで最も売れたのは、なんだか偶然でもないような気がしますね(笑)。

■トラブル対応が重要なわけ

トラブルが発生したときこそが、組織の力の見せ所です。実際に、迅速で的確なクレーム対応に満足した顧客は、高い確率でリピーターになってくれることが広く知られています。

これは、そもそもトラブルというのは、企業にとっては顧客との接触回数を増やせるまたとないチャンスだと考えると、より明確になるでしょう。なんの理由もなく訪ねてくる営業マンや、うるさい広告にはウンザリさせられている顧客でも、トラブル発生ともなれば、企業の対応に注目します。

もちろん、トラブルへの対応が誠実でしっかりしていることが最低条件ですが、トラブルを通して顧客との間に信頼関係が築ければ、後のビジネスがよりスムーズになることは間違いありません。

とはいえ、商品に不満を持った顧客のおよそ96%は、企業にクレームを言わず、黙って競合商品に流れていくことが知られています。トラブルの認知は、顧客からのクレームをきっかけとするのではなく、こちらから積極的に働きかけることでやっと見つかるものだという認識が重要でしょう。そうして積極的に「発掘」したトラブルは、顧客のためだけでなく、顧客との接触回数を増やすことになる自社のためにもなるのですから。